28/02/2016
自宅長屋門で、建築設計事務所を営んでいる一級建築士 古民家建築の専門家 與那原浩です。私が住んでいる妻の実家【太宰家】の玄関を紹介します。
式台は、元は下駄箱兼用のものがありましたが、シロアリの被害を受け朽ちていたので、10年前のリフォームの際に新しく造り変えました。式台の框は地松の梁材を転用しています。
時計を掛けている柱が大黒柱です。杉の8寸角(240㎜)で、大黒柱としては標準的な大きさになります。太宰家の柱は、そのほとんどが杉材が使われています。「なぜ桧を使わなかったのか」の答えは思案中です。
大黒柱に掛っている古い時計は、義母が嫁いできた頃にはすでに掛っていたというから、すでに50年以上昔のものですが、毎日ねじを巻くと、ちゃんと動いて、ボンボンボーンと時報を鳴らしてくれています。
板の間の材は松材が使われています。200年以上経っても艶があります。1800年代の昔から、どれだけの人がこの板を踏んでいるのでしょうか。
暗い玄関の中で、光線の当たり具合によって、この板が鏡の様に光ることがあります。まさしく鏡板です。
鏡のように輝くまで、私が想像しているより、ずっと多くの人々がこの板の上を通って、座敷にあがっていたのでしょう・・・
座敷から見下ろすと、広がる玄関や土間で、昔どんなことが行われてきたのでしょうか。
村の祭りごとや茅葺屋根の葺き替えの際には、かなり大勢の人々が集まってきたと聞いています。多い時には何百人もの人々が、土間奥の釜で煮炊きした食事を、賑やかにふるまわれたそうです。
今は静かな玄関ですが、目をつぶってみると、その時の喧騒が聞こえてくるようです。
家を大切に住み継いできた太宰家の人々の思いが、200年以上の時がたち、重厚な造りの玄関として輝きを放って、来客を迎えているように感じました。